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[かんがい農業の原点に立つ]
コモロ共和国と聞いてピンとくる人は、かなりのアフリカ通か生物学に造詣の深い人にちがいない。
アフリカ大陸南東沖、マダガスカル島との間のモザンビーク海峡に浮かぶ3つの島からなる国家である。その近海に“生きた化石”シーラカンスが生息することで有名な島々。
正式国名は「コモロ・イスラム連邦共和国」だ。
その昔、アラブ人の船乗りたちがこの島々を「月の群島」と名付けたという。アラビア語の月=カマール(Qamar)が国名コモロの語源だ。
どういうわけか海に向かって傾きかげんの椰子の木。夜、そんなシルエットを備えた天幕にくっきり浮かぶ月と星を眺めた時、この島々がイスラムの国であることに何の違和感も感じない。
このコモロ共和国で進められている「地下水利用による節水かんがいプロジェクト」。その現状をレポートする。
プロジェクトは日本政府による食糧増産援助として進められており、クボタが参画してきた。
●「塩の湖」のエピソード
コモロ共和国はグランド・コモロ島、アンジュアン島、モヘリ島の3つの島からなる。訪ねたのは、首都のあるグランド・コモロ島。島を一周した。一周といっても、ノンストップでクルマを走らせれば3〜4時間ぐらいの距離である。サン・テグジュペリが『星の王子さま』の中で“教会堂のように大きな木”“ほうり出しておくと、きっと、とんだ災難になる”と表現したバオバブの木があちこちに見える。
島の北東部海岸沿いに大きな湖があった。周りはすべて火山岩で、大きく陥没したところに海水が流れ込んだような地形である。湖の名前は「塩の湖(Lac
Sale)」。この湖にまつわる面白い伝説が地元の人たちの間に残っている。
かつて、この湖の地は陸地で、そこには小さな村があった。ひとりの旅人がその村でひとり暮らす老女の家に立ち寄り、“一杯の水を”と頼んだ。村には、よそ者に水を与えることを禁ずる掟があったが、老女は旅人を哀れに思い、こっそりと水を与えたのだった。しかし、一部始終を見ていた村人がいて、とうとう老女は村を追放されてしまう。それを知った神は大いに怒り、“そんなに水が大事なら、いくらでもくれてやろう”と村全体を陥没させ、湖にしてしまった。ただし、水には塩分が含まれており、飲み水としては使えない「塩の湖」にしたのだった…と。
この伝説があって、今でも、グランド・コモロ島では、この「塩の湖」の水が難病治療などに効果ありとして、遠くから水を汲みにくる人が後をたたないという。それで身体を清めたり、飲んだり…いわば“聖水”なのである。
そして留意すべきは、この伝説には、ここコモロ諸島の深刻な水事情が凝縮的に表現されているということだ。
コモロ諸島は南緯約12度に位置し、ちょうどインドネシアぐらいの緯度に相当する。海洋性熱帯気候で、年間降水量が1,500〜4,000mmもある。場所によっては8,000mmにもなるという。ところが、雨は12月から3月の雨期に集中し、4月から11月の乾期にはほとんど降らない。コモロは火山活動によりできた群島である。地層のほとんどは溶岩流で形成されており、透水性が非常に高い。降った雨がただちに地下浸透してしまうのである。そのために、グランド・コモロ島には川がない。いくつか川らしき地形が海岸沿い地域に残っているが、完全に干上がっている。雨期にはある程度、川らしい様子を見せるが、水は、急傾斜もあって、あっという間に海に流れ込んでしまうという。長い乾期には、生活用水にすら困っているというのが現状なのである。
こうした気候、地質、地形の下でいかなる農業が可能なのか?プロジェクトはこの課題に応える国際協力事業だ。
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グランド・コモロ島の「塩の湖」

コモロ・イスラム連邦共和国
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