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洪水に備える巨大地下トンネル
神田川・環状七号線地下調節池
─新しい治水コンセプトとしての「地下河川」─
「都市型水害に対する備え」として、もうひとつの例をあげよう。―東京都が掲げる「環七地下河川」構想。首都東京において、山の手・白子川から東京湾に至るまでの約30kmの“地下河川”を作りあげようとする構想である。地下約40mの深さを、10mを超える口径の河川トンネルを走らす。それはちょうど山の手を南北に横断し、都道環状七号線の地下を走るので「環七地下河川」と命名されている。最上流の白子川、ついで石神井川・神田川・目黒川の4水系10河川のオーバーフローを防ぐ役割を果たす。
●「環七地下河川」構想
これは遠い未来の構想ではない。構想の実現に向けてすでに建設は始まっている。「神田川・環状七号線地下調節池」の建設がそれだ。現在のところ「調節池」だが、将来は地下河川の一部となるものである。
こうした地下構造物には必要不可欠なダクタイルセグメントの供給を通じて、「神田川・環状七号線地下調節池」建設に参画しているクボタ(注1)。素形材技術部の相場勉さん、量産鋳物営業部の山内裕之さんを訪ね、この地下調節池の何たるかを聞いた。
「今は調節池として建設されているわけですから、その機能は、豪雨で川の水位が高くなったら、川に設置された取水施設から地下トンネルに水を取り込み一時貯水する、雨がやみ水位が下がったら、貯水した水をポンプで川に戻してやる…ということになります」
この地下調節池の口径は12.5m。その大口径ぶりを表現するなら、「現在建設中の東京湾横断道路の海底トンネル部の口径とほぼ同じ」とのこと(本誌『GLOBAL INDEX VOL.4』参照)。長さは4.5km。第1期事業としてすでに2qのトンネル部が完成し、現在、取水施設の建設中(図A参照)。残る2.5kmも第2期事業として近い将来、着工される予定だという。第2期事業が終われば、「環七地下河川」構想全体の約7分の1が完成することになる。この地下調節池は神田川と善福寺川の中流を横切るように位置し、その洪水に備える。豪雨に際して貯めることが可能な水量=貯留容量は54万立方メートルとのことだ。
将来的には、この地下調節池が延長され、約30kmにわたり東京山の手を南北に走り、東京湾へと到達する地下トンネル=“地下河川”になる。東京湾岸では10河川からオーバーフローした水が海へと放出される。
●“75ミリ降雨対策”の中核事業として
「東京都ではこれまで、おおむね3年に1回は起こるとされる1時間50mmの降雨を想定して、治水計画を進めてきました。しかし今は、3年に1回ではこころもとないので、1時間75mmの降雨─それは15年に1回とされますが─に対処していく必要があるとしています。この“75ミリ降雨”に対応する新しい治水計画として地下河川構想が打ち出されたわけです」
洪水が起こるか否かは、総雨量もさることながら時間雨量、つまり短時間にどれだけ雨が降り注ぐかが大きな要因になっているらしい。少なくとも、現在の東京では。普通、治水対策と言えば川幅を広げ、川底を深くする改修事業をよく見かけるが、東京では河川の拡幅は用地確保の面から限界に達している。浚せつも河川の勾配の点から難しいという。そこで幹線街路の地下を利用する地下河川構想が浮上してきた(注2)。そして、「環七地下河川」はこの地下河川による“75ミリ計画”の中心をなす事業として位置づけられているという。また、神田川・環状七号線地下調節池の建設は「環七地下河川」実現へ向けての第一歩となる事業である。
●しばしば“暴れ川”と化す神田川
ではどうして、まず神田川中流に地下調節池なのか?それは、言うまでもなく洪水被害の多発地帯であるからだ。たとえば、昭和57年(1982年)の台風18号が関東地方を襲った際には、善福寺川との合流地域で1,600棟にもおよぶ家屋浸水の被害が出たという。最近の例としては、平成5年(1993年)の台風11号。「地下鉄駅に水が流れ込み、銀座線・東西線が不通に」というニュースも流れた、あの台風11号だ。この時も神田川は氾濫し、浸水家屋の大半がこの流域に集中したのだった。
神田川は三鷹市の井の頭池を源として、途中、善福寺川・妙正寺川を合わせ、日本橋川を分派して隅田川に注いでいる。この流域にはおよそ180万人もの人々が暮らし、経済活動も活発に営まれている。典型的な都市河川である。
かつてフォークソングでセンチメンタルに歌われた神田川も、実は、しばしば“暴れ川”と化す。首都圏における過去の水害の歴史を見れば(表B参照)それは一目瞭然だ。
昭和50年代以降、大きな水害発生に際して、氾濫した河川としては、ほとんどと言っていいくらい神田川の名前が筆頭に上がっている。この“暴れ川”たる神田川を一刻も早く治める必要があったのである。
「神田川・環状七号線地下調節池の建設が優先されたのは、こんな背景からです。しかも、即効性の高い治水対策として、流域住民・治水関係者から大きな期待を集めているのです」
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神田川・環状七号線地下調節池内部(施行時記録写真)

神田川・環状七号線周辺
─高円寺陸橋上空より南方向を臨む
(写真中のラインは地下調整池の
おおよその位置を示す)

雨で増水した神田川記録写真
―警戒の土のうも用意されている
(1981年10月9日〜豊島区高田にて
/写真提供:毎日新聞社)
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